合唱コンクールの伴奏を引き受けてきた
生徒さんが楽譜を持ってきました。
その生徒さんは、お姉ちゃんと二人で長くやっておられるけれど、
決して練習熱心ではなくて、なかなかピアノに
(保護者の方がおっしゃるには何事にも)
熱心になったことがありません。
でも
「私、ピアノをやめる日が来るなんて想像もできひんよ。
だってレッスン楽しいもん。」
と言ってくれたので、彼女のペースに合わせて、
学校の話を聞いたり、好きな曲を探したりして、
一緒にレッスンをしてきました。
「続けていれば、必ず成長しているから」
誰に対してもいつもそう信念を持っているからです。
しかし、こいつだけは心配(失礼・・・すまぬ・笑)
合唱コンクールの曲はけっこう難しくて
「お姉ちゃんをレッスンしている間に楽譜のわからないところ
チェックして書いておいて」
と言っても「だって全部わからへんし・・・」と
放り出して漫画を読む始末。
彼女のレッスンの番になり
「楽譜もらってからどのくらい練習した?」
「全然やってへん。だってわからへんもん」
「そうか。じゃあ、右手から弾いてみよう!」
あとはいつものレッスンのように彼女にあわせることなく
・・・沈黙を守ってみました。
どこまで一人で楽譜を読んで、できるんだろう?
すぐに弱音を吐くかもしれないなと。
半信半疑だったけれど信じたい気持ちもありました。
合唱コンクールの曲は繰り返しもあるし伴奏のパターンも変わるし
すごく長いのです。
「できない」と決めている彼女は、はじめは
「いや~、わからん。絶対無理!!」
と茶化していましたが、
それでも沈黙を守ってみると、彼女もすぐに静かになり、
自分の力だけで楽譜を読んで、弾き始めました。
「がんばれ、がんばれ!でももうすぐ音を上げるかも・・・」
祈りながらも心の中で心配していました。
20分くらいかかったでしょうか・・・
でも最後まで自分の力だけで、集中力をとぎらせることなく
彼女は弾きとおしました。
「最後までできた・・・」
「すごいやん」
「だって、先生いつもの雰囲気と違って静かやし・・・
あの沈黙の中ではやるしかないやろ?」
「心ではがんばれって言うてたねんで」
「わかってるって。長い付き合いやし。」
「でも正直、最後までやれるとは思わなかったよ」
「私も。びっくりした。やれるもんやな」
「きっとそれが本当の力や。いつもはできるかどうかわからんから
不安で茶化してばかりいるけど、ちゃんと続けてきたから
絶対に弾けるようになってると思ってた。」
「私、弾けるんやなぁ」
“本当の力”
それは普段は外に見えないけれど、誰もが持っているのだと思います。
それを引き出してあげるのに必要なのは
「生徒さんとの信頼関係」だと
改めて感じました。
後日、心配して彼女にメールで様子を聞くと
「心配しないで。ちゃんとやってるから。
次のレッスン、期待しておいてね」
との返事が返ってきました。
頑張ってほしいです。
コメントをお書きください